【分離編】
分離の目的
1.分離の目的
地声と裏声に限らず、混合が予想されるパーツ(仮声帯・喉頭蓋・軟口蓋・唇・舌など)はすべて分離して、それぞれを独立した状態で動せるようにするため、そして自分の発声状態を確認するために分離していきます。
2.声の混合とは
意図したパーツを動かせないこと。
(例)地声を出してるつもりが裏声が混ざってしまう…など
声帯
1.声帯とは
声を出す主役、楽器
2.位置
喉仏の裏
3.役割
息が当たることによって振動する2枚のひだ
姿勢
歌唱時の姿勢
自然な姿勢で大丈夫です。
発声タイプや音楽ジャンルによって個人差があるので、自分が声を出しやすい姿勢を見つけましょう。
呼吸管理
1.呼吸管理とは
息を止めている間、外肋間筋という筋肉が呼気を身体の中に留めてくれる働きのこと。
2.効果
①声帯閉鎖がしやすくなる
→少量の息が通るから
②息漏れを防ぐ
→意図的に出す息の量を調整できるから
3.練習方法
- 大きく息を吸う。
- これ以上吸えなくなったタイミングで「声帯は開いたまま」息を止める。
- 息を止めている状態をキープしながら声を出す習慣を付ける。
4.ポイント
息を止めた状態でドッグブレスができれば成功。
完全呼吸
完全呼吸とは
腹式呼吸と胸式呼吸(呼吸管理)を同時に行う呼吸法。
腹式呼吸のやり方
横隔膜の上げ下げで肺の面積を変える呼吸方法です。
①鼻から息を吸い、お腹を大きく膨らませる
→横隔膜が下がる、肺が下にひっぱられ膨らむ、同時に空気が肺に入る
②鼻から息を吐き、お腹をへこませる
→横隔膜が上に上がる(元の状態に戻る)、肺が縮む、同時に空気が排出される
③1~2を繰り返し行う
胸式呼吸のやり方
①お腹を薄くしたまま鼻から息を吸い、胸に呼吸を送るように肋骨を広げる
→この状態で息を漏らさずキープするのが呼吸管理
②鼻から息を吐き、胸・肋骨を閉じて元に戻す
③1~2を繰り返し行う
練習方法
8(前)-8(凹)-8(吐)-7(止)-1(吸)
- 鼻から息を吸う(完全呼吸)→呼吸管理をしながら8カウント、口から息を吐く。
- 呼吸管理を緩めながら、8カウント息を吐く。
- さらに呼吸管理を緩めながら、8カウントで息を吐き切る。
- 7カウント息を止める。
- 1カウントで鼻から息を吸う(完全呼吸)
①〜⑤を繰り返す。
息の吐き方
・歯の隙間から「ツー」と一定で鋭い息を吐く。
声の仕組み
1.呼気
肺から空気(息)を送る。
2.声帯閉鎖
- 肺から送られてきた息が閉鎖した声帯の隙間を通る。
- 声帯が振動。
- 息が細かく断続的に途切れ「音(エッジボイス)」が出る。
◼︎エッジボイス
- 息を大きく吸い込んだタイミングで「声帯は開いたまま」いきなり息を止める。
- 声を出そうとする。
- 「ブツブツ」と音が鳴ったら一定の息でキープ。
3.共鳴
声帯で発生した音が喉、口、鼻の共鳴腔で響く。
4.言葉の形成
口の器官で母音・子音を形成して響いた音が「声」になる
地声と裏声の違い
1.地声
声帯が短く分厚い状態。声唇が振動した声。
2.裏声
声帯が薄く張った状態。
輪状甲状筋が収縮→声帯の厚さ・張り・長さを調節(伸展運動)。
声を高くするにつれ声帯靱帯がピンと張られ、その先の粘膜のみが振動した声
3.【映像】声帯の伸展運動
4.【映像】声帯の動き
歌声の種類
1.チェストボイス(胸声)
息漏れのない芯のある地声
◼︎チェストボイスのみを使用した歌唱
♪「桜坂/福山雅治」
2.ウィスパーボイス
息漏れのある地声
◼︎ウィスパーボイスのみを使用した歌唱
♪「桜坂/福山雅治」
3.ファルセット
息漏れの多い裏声(海外では裏声全般を「falsetto」と呼ぶ)
イメージ : フクロウの鳴き声
◼︎ファルセットを部分的に使用した歌唱
4.ヘッドボイス(頭声)
芯があり息漏れが少ない裏声
イメージ : ミッキー
◼︎ヘッドボイスのみを使用した歌唱
♪「LA PA PARADISE/BRADIO」
6.ミックスボイス
ミドルボイスの声区ををほぼ全音域まで拡げて、地声・裏声の中間をとり、低い地声から高い裏声までを滑らかに繋ぐことのできる状態・仕組みのこと。
7.ベルティングボイス
喉絞めではない状態で高音域を地声のような強い声で出す発声法
◼︎ベルティングボイスを使用した歌唱
♪「innocent world/Mr.Children」
8.ホイッスルボイス
笛のような音で出す超高音域の裏声
外転と内転
外転
1.外転とは
声帯が少しだけ近づく動き。多くの隙間が残るので息漏れした声になる。
2.発声方法
ため息、コソコソ話
内転
3.内転とは
声帯がしっかりと近づく動き。普段の話し声のような声になる。
4.発声方法
「オー⤵︎」でしっかりと最初のアタックを作って発声。
外転→内転
5.発声方法
声帯を開いた状態から徐々に内転(閉鎖)させていく。
6.地声
「アー」(〜E4)
7.裏声
「フー」(B3〜B4)
内転→外転
8.発声方法
声帯閉鎖した状態から徐々に外転(息漏れ)させていく。
9.地声
「アー」(〜E4)
10.裏声
「フー」(B3〜B4)
仮声帯
1.仮声帯とは
声帯を支えるサポート役。主に大きな声を出す時のサポートをします。
2.位置
声帯の上
3.発声方法
咳払い→呼気圧をかけていく
4.特徴
①息が漏れると働き出す
息が漏れる→声帯が開く(仕事をサボる)→仮声帯が声帯の仕事を補う
②喉を上げると働きやすくなる
喉を下げた地声の方が仮声帯のバリバリ感が少なくなる。
③笑うと開く
口角を上げたり笑うと仮声帯の働きが弱くなる仕組み。
地声と裏声
純粋な地声(チェストボイス)
1.発声方法
息漏れのない芯のある地声「ア」
2.練習音源
3.音域
~E4
それ以上の音域はどんなに地声に聞こえても裏声系の筋肉が働き出してしまい、負荷が地声と裏声に分散してしまう。
4.ポイント
①息漏れNG(呼吸管理の意識)
②ありったけの大きな声を出す
限度はあるがアタック感のある地声を出せないと、地声系の筋肉を使うことができない。
③仮声帯が入るのを気にしない
仮声帯の性質上、声量が上がると働きやすくなりバリバリと音を立て始めますが、ここでは気にしなくて大丈夫です。
純粋な裏声(ピュアファルセット)
1.発声方法
息漏れが非常に多い裏声「フー」
2.練習音源
3.音域
B3〜B4
この音域の範囲外になると、裏声系以外の筋肉が働き出す。
4.ポイント
①2〜3秒で息が切れるように。
地声とは逆。息を漏らすことで声帯が開いて地声系の筋肉が働くのを防ぎ、裏声系の筋肉に絞って働かせることができる。声の出し始めから息漏れ意識。
②母音の変化NG
口の形が変わらないように。特に「イ」「エ」「ア」に近づいてしまうと、口の動きにつられて地声系の筋肉が働き出してしまう。
③芯が入らないように
④口の形を固定
口の周りやほっぺたを両手で抑えた状態で行う。
唇(舌)と喉
1.分離目的
喉は想像以上に口の形(母音)に影響を受けます。その影響を極限まで少なくするために分離していきます。
2.練習方法
発声方法 |
息漏れのない地声(〜E4) |
息漏れのある地声(〜E4) |
中間の声 |
息漏れのある裏声(B3〜B4) |
息漏れのない裏声(B3〜B4) |
喉のポジション(高) |
50音 |
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喉のポジション(中) |
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喉のポジション(低) |
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唇の形(横) |
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唇の形(ニュートラル) |
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唇の形(前突き出し) |